幸せ3 家族に対する感謝の気持ちが生まれる 

第三章 家族に対する感謝の気持ちが生まれる

私と子どもたちとで、『家事リスト』をはじめて共有した日、単身赴任中の夫がしてくれている家事に話が及びました。

母「お父さんって、何もいわないで地味な家事しているよね。」
姉「買い物袋たたんでくれたりね。」
母「そうそう、生ごみ用に新聞紙を折ってくれたりとか。」
母「そういえば、換気扇のフィルターが綺麗になってたのよね。」
姉「台所の排水溝のネット、一番換えてるのお父さんかもね。」
弟「あ、それ僕もやってる」
姉「私もやってる」
母「実は他にもいろんなことやっていてくれたりしてね。」

我が家の夫は、典型的会社人間で、もともと家にいる時間が少ないので大きな家事を任せることはできません。
また、性格的にすごく気が利くタイプではないので、「よーし、今日はお父さんが夕飯を作るぞ。」なんていうシチュエーションは残念ながら一度もありません。

でも逆に、何かを頼むと、誠心誠意丁寧にやってくれます。また、一度頼んだ細かい用事は、地味にやり続けてくれます。

ただ、あまりにも地味すぎる家事をし、決して自分からアピールしようとしないので、誰も感謝の気持ちを伝えられていませんでした。

それは、彼が聞こえるか聞こえないかの声でこっそり伝えていた愛を、無視していたということです。彼がくれたラブレターがあまりに小さすぎたので、気づかず放っておいてしまっていたのです。

私は、自分が書いた大げさなラブレターのことばかり見せつけて、「どうしてあなたは私にラブレターを書かないの!」と責めてばかりいましたが、彼の小さなラブレターを無視していたのは、私の方だったのかもしれません。

私は、さっそく『家事リスト』に夫のやっている細かくて地味な家事を追加しました。彼の小さな優しい愛が消えてなくならないように。

ちなみに最近家事リストに加えられたものの中に「他の人のさがしもの」があります。

これは、私がしょっちゅうものをなくし、夫がいつも探してくれるので加えたものです。

そんな項目で家事リストのサインがいっぱいになると、お互いが感謝の気持ちを忘れないようになります。

現代の男性は、「イクメン」とか「男女共同参画」とか「家庭科の男女必修」の洗礼を浴びていますので、一昔前に比べると家事・育児への参加率が高いと思います。

結婚をし子どももいたら、家事参加率ゼロなんていう男性は皆無でしょう。

一方、それが当たり前すぎて、よほどのことをしないと感謝されていない状況にもあると思います。

前章で書いた通り、男性にとって家事は自然に気づくものではありません。家事で愛情表現なんて思いもよらないことでしょう。でも不思議なもので、家事は愛情表現よねという妻の言葉を聞きながら『家事リスト』にサインをし続けると、それがいつの間にか本物の愛情表現となっていきます。

2014年8月に『家事ハラ騒動』というのがおこりました。

和光大学教授の竹信三恵子さんが、著書『家事労働ハラスメント』(岩波新書)の中で、「女性が家事を一手に担わされていることにより受ける苦痛」の意味で使用した造語『家事ハラ』を、旭化成ホームズ・共働き家族研究所が広告の中で「夫がせっかくやった家事に対して妻にダメ出しされることにより受ける苦痛」という意味で使用したことにより非難が集中し、広告掲載期間を短期で終了させざるを得なくなってしまった騒動です。

旭化成ホームズ・共働き家族研究所が出した広告に、我が意を得たりと思った夫もいたかもしれませんが、この騒動をとおして「本来ハラスメントを受けているのは私たちの方なのに」ということで女性が激怒したのをみて、「寝た子を起こしてくれるなよ」と苦々しい思いをしたとかしないとか。

メディアは、こんな風に男性対女性の構造を作るのが好きなようですが、この問題も「家事=愛情表現」の構図で解釈すると、ちょっと違う姿が見えてきます。

女性側の『家事ハラ』(「女性が家事を一手に担わされていることにより受ける苦痛」)については、すでに説明しているとおりです。

一方、男性側の『家事ハラ』(「夫がせっかくやった家事に対して妻にダメ出しされることにより受ける苦痛」)は、
男性が下手なりに精いっぱいしている愛情表現に対して、「何、そのあなたのラブレターの書き方は!」というダメ出しをだしていることにならないでしょうか。

家事を労働時間の奪い合いだと思うと、その質と量の比較で、相手の家事の良しあしについて争いが起こってしまいますが、愛情の与え合いという視点でみれば、家事の上手下手は大した問題ではありません。

新入社員が最初から上手に仕事ができるようにならないように、夫の家事というラブレターだって、そんなにすぐに上手に書けるようにはなりません。夫が上手にできるようになるためには、作業レベルを下げてあげることも大切です。

洗濯ものを「取り入れる」「片づける」という簡単なものから「洗濯機を回す」「洗濯ものを干す」と進化させていく間に、彼なりの工夫も出てくるかもしれません。

慣れない部署に配属されて不安でいっぱいなとき、前からその部署にいる人に「なんでそんな簡単がこともできないわけ?」って言われたら相当ショックをうけ、仕事もやめたくなってしまいますものね。

『家事リスト』を続けていると、家族がしてくれている愛情表現に対する感度も鋭くなるはずです。

夫の上手にできない「好き」は、「不器用なかわいい愛」と映るかもしれません。

そうして、男性がしてくれているちょっとした家事に感謝できるようになると、家庭はさらに幸せで満たされていきます。

 

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幸せ番外編    社会問題としての家事労働

エピローグ 

 

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