「万能鍋」と「重ね煮」

「万能鍋」と「重ね煮」

子どものころの台所の記憶には、いつも大きい「万能鍋」がでてくる。
「万能鍋」は、蓋も直接火にかけることができる鍋で、無水鍋としての用途とフライパンとしての用途を兼ねていた。

小さいたまちゃんは「ばんのーなべ」という名前の鍋だと思っていて、「万能鍋」という漢字があてられると知った時は、あまりにぴったりで感動した。
その鍋は本当に万能で、実家ではカレーも茶碗蒸しもホットケーキさえも、すべて「万能鍋」で調理していた。

「安物買いの銭失い」を嫌い、食材や調味料もお気に入りのもの以外使わなかった祖母が、若いころ当時の鍋の価格としては高額だったため周囲が反対したのを押し切って求めたらしい。
それは50年以上ほぼ毎日我が家の調理を一手にになっていたのだから祖母の物を選ぶ目は確かだった。

そして「万能鍋」は祖母から母へと、多くの万能鍋レシピとともに受け継がれたが、台所をIHに改装した際に引退した。

ある夏実家に帰って台所から万能鍋が消えていたときには少しだけ寂しかった。

 

その後、ネットで同じ形のものが「無水鍋」という名前で売られているのを知りさっそく購入した。

ただ、新品のそれは、どこかよそゆきの顔をしていて、我が家の台所にはなじまなかった。
不用品はなんでも捨てる私だが、なんとなくその鍋は捨てることが出来ず、鍋置き場に隠すようにしまっておいた。

 

先日ヒーリングフード協会の料理教室で「重ね煮」の講座を受けた。

重ね煮は、食材を弱火で40~50分煮る調理法で、講座ではストウブ社の鍋を使っていた。
「重ね煮」の美味しさにすっかり魅了され、形から入る私はさっそく我が家でもストウブ社の鍋を買おうを思ったのだが笑、ふと「万能鍋」のことを思い出した。

そうだ、「万能鍋」を使ってみよう。

塩、玉ねぎ、人参、レンコン、塩を入れて、弱火煮ることで40分。
コトコトじっくり煮る「重ね煮」に、万能鍋は期待以上の働きをした。

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万能鍋で作った「重ね煮」は、祖母や母の料理のようなやさしい味がした。

万能鍋が急に我が家の台所の主のような顔になった。

 

鍋フリークのたまちゃんより

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