
聞こえすぎる世界
10年くらい前から、耳鳴りがするようになりました。
そのせいで高い周波数の音が聞こえにくく、特に電子音で知らせる家電などは終了音が聞こえなくて困ることもしばしば。
10年前大学病院にかかった時は、治療法はないので慣れてくださいと・・・とほほ。
ところが、最近読んだ本「耳鳴りの9割は治る (脳の興奮をおさえれば音はやむ)」に耳鳴りと難聴は順番が違うことがわかったと書いてありました。
耳鳴りがあるから難聴なのではなく、難聴があるから耳鳴りになるのだそうです。
何かの理由で、高い周波数の音の伝達に問題が起きると、脳が勝手にその周波数の感度を上げてくれるのだそうです。
その周波数の感度が異常に高すぎると、脳内の血流の音などが増幅され耳鳴りとして聞こえるのだと。
なるほど。耳鳴りって、私の脳ががんばってくれているということだったんだ。
それなのに、聞こえない耳を恨んでいたなんて・・・言いがかりもいいところです。
原因がわかれば治療もできます。
高い周波数だけよく聞こえるように調整された補聴器をかけていると耳鳴りが治る場合があるとか。
さっそく、その治療を取り扱っている大学病院の耳鼻咽喉科で補聴器を処方してもらいました。
ところが、補聴器をしたら「聞こえる」なんていう生易しいものではありません。
眼鏡を初めてかけたときのように、脳がまだこの感度に慣れていないので、とにかく煩い。
機械は色々な音を容赦なく伝えてきます。
大人どおしの会話や、低いボリュームの音は問題ないのですが、甲高い音、大きい声。
意外なところでは生活音がすごく煩い。
食器のぶつかる音、包丁がまな板に当たる音、ナイロン袋のカシャカシャいう音。
そんな何でもないように思われる音が次々と脳を攻撃してきます。
玄関のベルが鳴った時にはビックリしすぎて心臓が飛び出すかと思いました。
トースターでパンが出たときには、百メートル競走が始まるピストルが鳴ったのかと笑
世界は突然バイオレンスに満ちてしまいました。
そこでふと思いました。
学校で問題行動を起こす子どもたちの中には、こんな風に耳が聞こえすぎるのが原因の子もいるのではないかと。
以前に書いた「うちの火星人 5人全員発達障がいの家族を守るための”取扱説明書” 」でも子どものころ異常に耳がよく、考えられないような遠くの音が聞こえているのがわかって驚いたと書いてありました。
ピアニストの辻井伸行さんは子供のころから耳が良く、赤ちゃんのときはあらゆる物音に反応して泣きわめいていたそうです。
補聴器をして聞こえすぎる世界にいると、彼らの気持ちが分かります。
世界中が常に自分に攻撃してくるように感じるのです。
もし補聴器をした私が小学生だったらと思うとぞっとします。
子どもたちの甲高い声、それを注意する先生の大声、教室の机やいすがガタガタ言う音、黒板にチョークがあたるカツカツいう音、授業のはじめと終わりに必ずなるベル。
遠くでひそひそ囁かれる自分の悪口。
うわーーーーーー!
想像しただけで気が狂いそうです。
もし、彼らの世界がこんなだったら、とてもおとなしく座っていられるはずがありません。
また、発達凹凸の家族が5人いる平岡家では、5人全員が共感覚を持っていると言います。
共感覚の人は、色が味として感じられたり、数字が色として感じられたり、音が味として感じられたりするそうです。
例えば、学校で先生の声や友達の声がまずい味に感じられたり、ある数字をみると汚い色を感じられたりしたら・・・
自分がその立場になって初めてわかりました。
見えない、聞こえない、感じないは問題になりやすいけど、見えすぎる、聞こえすぎる、感じすぎるは分かってもらうのが難しい分つらいのだろうなあと。
彼らは、発達障害どころか進化しすぎた子どもたちで、進化の遅い一般人の発達遅延に悩まされているのかもしれません。
もし、気質ではなく器質が原因の一つだとしたら、なんらかの医学的解決方法があるかもしれません。
たまちゃんの今日の一言
「問題は感じている世界が違うことかもしれない」
暴力に満ちた世界にいるたまちゃんより
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